元ネタ
youtube.com 12歳のヴァイオリニスト吉村妃鞠(HIMARI)さんが、
4年前(2019)の8歳の時にロシアで優勝した、若手音楽家のための国際テレビコンクール「くるみ割り人形」の映像が、ここ数カ月でまたバズっているようです。
彼女はこの大会で一次予選、二次予選、決勝と三度演奏しているのですが、特に、一次予選の「ツィゴイネルワイゼン」が名演だと人気が高く、その様子を抜き取った大会公式のYoutube動画が現時点(2023年9月)で400万再生を軽く超えています。
僕も初めて観た時は、目を疑うほど驚愕させられました。
この「ツィゴイネルワイゼン」というのは本当に恐ろしい曲だったからです。
何が恐ろしいのかと言うと・・・・・・
演奏者の
実力を丸裸にしてしまう のです!
テクニックだけでなく全ての音楽要素を超高水準で求められるのです。
それを僅か8歳の女の子があまりにも見事に弾き切った。
過去に自分がなりたかった存在にあんな小さな子供がなっていた。
だからこそ、心底驚きましたし、呆然とさせられました。
まずは、そんなヒマリさんの愛らしい雄姿を観て下さい。お願いします。
(現在と過去で区別するため、当時8歳の彼女をヒマリさんと呼称します)
第20回国際コンクール「くるみ割り人形」一次予選 吉村妃鞠(
LINK )
VIDEO (あれ…Firefoxだと再生できない。何故だ?すいません上のLinkから…)
うん。本当に凄い。素晴らしい。(語彙力…)
ヒマリさんの名演もさることながら、その後の審査員たちのリアクションと採点が愉快痛快なのも、この演奏がバズってる一因でしょうね。
その審査員の寸評を、Youtubeのコメント欄で翻訳してくれている方がいましのたで、有難く引用させて頂きます。
(司会者)採点は、12、12、12、36点の最高点です。何かおっしゃりたいことがありますか?それとも言葉を失いましたか? (左の審査員)13点を探しました。もし13点があれば13点をあげたい くらいです。とても感動しました。今までこんな演奏は見たことがありません。でも少し心配です。なぜならこんな若い人でこれほどのレベルに到達するとは素晴らしい才能です。彼女が才能を伸ばすことを望みます。あまりプレッシャーをかけるべきではありません。彼女は良い指導を受けていると確信しますが。 (右の審査員)私も13点を喜んで差し上げたい 。でも13は不吉な番号ですから、なくてよかったかも。説得力、驚くべきテクニック、そしてスローな楽節では信じられない音色をあたかも彼女自身の体を通して流れ出すように見せてくれました。もちろん彼女はよく練習していますが、それ以上に曲の雰囲気を感じとっています。彼女はすでに偉大なアーティストです。 (中央の審査員)私が言いたいのは、彼女の音楽を聴いているとテクニックやそんなことは忘れてしまいます。彼女は実にその瞬間の雰囲気の中に生きています。彼女はユニークな才能 を持っていると思います。
5年連続でこの大会の審査員をやっているザハル・ブロン氏が、比類のない(unique)才能とまで言ってることは、皆さんが思っている以上に凄いことじゃないかと。
そして、ヒマリさんがこの大会でやったことは、さらにもっと驚くべきことなんです。
それをどうしても伝えたくて、2年半ぶりにブログを更新しました。
まず、このヒマリさんの名演動画一つとってもそうです。
Youtubeに海外反応の動画が山ほどあがっているみたいですが、
彼女の本当の凄さやドラマを十分に伝えているとは思えません。
実はこの動画には、皆さんが観て感じたことの2倍、いや、
3倍もの感動やドラマ、謎、そして「闇」 までもが詰まってるんです。
その全てを理解した者は、ただの一人もいないでしょうね。
何故なら、この動画を観ただけでは分かりにくい or 気付けないからです。
でも、僕はそれを皆さんに知ってほしい。
このロシアの国際コンクールで何が起こっていたのかを。
どれほどの偉業をヒマリさんが成し遂げたのかを。
「感動した」「天才だ」、だけで終わってほしくない。
何がどのぐらい凄いのかを掛け値なしに知ってほしい。
かく言う自分も、それを十二分に語ることはできません。だけど・・・・・・
それでも伝えたいことが一杯あるんです! という訳で、この連続記事(全3回か4回)をぜひ最後まで読んで下さい。
ヒマリさんからもらった感動に報いると思って、どうかお願いします。
「まぁそこまで言うなら読んでやらんでもないけど、
感動とドラマはともかく、謎と闇って何だよ?(笑)」
そう思った全国1千万の読者の皆様。あの動画を観て、
「妙だな…」「あれれ~おかしいぞ~」とコナン君になりませんでしたか?
謎の小さな例は、ヒマリさんがステージに出てきてお辞儀をするシーン。
そのあまりにも小さく可憐な姿を見た画面左の若い審査員(ハンガリー人の著名チェロ奏者)は、「えっ、こんな8歳の少女が生放送コンクールで超難曲やるとか大丈夫なの?え、えぇぇぇ?」って感じでアタフタしながら隣を見ますが、そこにいる重鎮ザハル・ブロン氏(ヴァイオリンの世界的指導者)は、平気な顔してニヤニヤしてますよね。これにはちゃんと理由があります。
大きな例は、ヒマリさんが演奏を終えた後の採点シーン。
始まる前にもの凄く心配していたのもあってか、まさかの名演に感動が止まらないチェロ兄貴イシュトバーンは、「12点(満点)どころか、13点をあげたくて探してた」と苦笑いし、それに対しもう一人の重鎮ダヴィド・ゲリンガス師匠(チェロ奏者・指導者)まで、私も13点をあげたいと口を滑らせた。
若く初めて審査員になったチェロ兄貴はまだしも、この道の権威で3年連続で審査員をやっているガス師匠まで乗っかったのはちょっと「妙だな…」なのです。
僕が動画を漁った限りでは、ここ10年(2013-22)でそんなことを言った審査員はガス師匠も含めて一人もいないのだから尚更です。
まさに「空前絶後」の褒め言葉でした。
実際、この二人が
本気で13点にしたかった のには明確な伏線があります。
そして謎の最たる例は、やはりヒマリさん演奏後の採点シーン。
あまりにも見事な演奏に感極まったザハル爺さんが、ブラボーを連発し拍手を止めようとしませんでした。ヒマリさんの名演に相応しい幕引きではありましたが、さすがに「妙だな…」と思いませんでしたか?
純粋に感動を表現したいのなら「ブラボー」と大声で言えばいいのです。
実際、客席の誰かがそう言ってるっぽいのが聞こえましたよね。
でもザハ爺は、口パクか呟きで何度も何度もブラボーとやりました。
(審査員の拍手の音をマイクが拾ってるので大きな声なら聞こえた筈)
逆にガス師匠はブラーボと口パクすらせず、真一文字に唇を閉じていました。
あれだけ感動して寸評ではベタ褒めしていたにも関わらずです。
これは何故でしょうか?
恐らく、大きな声に出せない理由があったんです。
だから、ザハ爺はその代わりにやり過ぎなほど拍手を続けて感動を伝えたんです。
だから、司会者がその直後に「
言葉を失いましたか? 」と暗に皮肉ったんです。
(ザハ爺エンドレス拍手中の司会者の苦笑ももっと深い意味がある…かも)
まぁ我ながら、ちょっと強引な仮説ですが、ネタだと思って付き合って下さい。
だぶんこれが原因だろうと思われる伏線を見つけてはいますので・・・・・・
以上の謎の解明や推測は、後述しますのでまたその時に。
さて、謎リストはこの辺にして、「闇」についてですが、
それは第3回で書くので、今回は割愛させて頂きます。
ただ、あの動画には、全く隠されずに堂々と映ってますよ。闇なのに。(笑)
あ、もしかしたら、これも謎と言っていいかもしれない。
何故、ヒマリさんの演奏はあんなにも聴く者を感動させるのでしょうか?
僕のようなクラシック素人だけでなく、あの場にいた愛好家の中年女性をも泣かせ、世界で最も忙しいチェロ奏者と言われた一流プロのイシュトバーン兄者やクラシック界の御大二人までヒマリ・ワールドに引きずり込み、最後の最後まで魅了し続けてましたよね。
クラシックの名演を嫌というほど聴いているプロ中のプロ3人を8歳が虜にするとか、ホーリー・ウンコ(有り得ない)にも程があります。
一体、ヒマリさんの何がそうさせるのでしょうか?
その理由は、間違いなくこれでしょう。
・芸術的なまでの表現力 「そんなことお前に言われんでも、観てりゃ分かるわ!」
そう思った全国1千万の読者の皆様。お説ゴモゴモゴモゴモご尤も。
ですが、その表現力が具体的に何によって構成されているのか分かりますか?
僕はこの4つだと思うのです。
テクニック、リズム感、音楽的センス、そして
自制心 。
「最初の3つはともかく、自制心て何じゃそりゃ?」
そうピクリとした全国1千万の読者の皆様。まんまと釣られましたね。
そのまま最後まで喰い付いていてくれれば、きっと理解してもらえると思います。
なぜ、自制心がヴァイオリンに限らず楽器演奏者には必要なのかを。
話しを表現力に戻します。
それを構成する4つの要素を何とか分かりやすく説明する為に、
僕の昔ばなしを交えさせて頂きますね。(あ、帰らないで…ホントお願い…)
中学生の頃、友人が「バンドやろうぜ!」と言い出し、僕はギターを始めました。
Fのコードが押さえられなくて直ぐにギターを止めた、なんてことを言う人がいるみたいですが、それはエアプだと思います。
Fコードなんて本気で練習すれば、早ければ5分、遅くとも1時間で99.9%の人は弾けるようになります。
なので、
本当のギター(弦楽器)の最初の壁 はこれなんです。
・小指が動かない! もうね、ビックリするぐらい動きません。
生まれたてのバンビのようにヨレヨレなんです。
これを素早く動かすなんて絶対ムリじゃんと最初は必ず絶望します。
だけど、人間の体って不思議ですよね。
動け、動け、もっと動け!と念じながら、1週間、1カ月と練習を続けると、本当に動いてくれるようになるんですから。
さらに練習を重ねて、小指が何とか思い通りに動くようになってくると、
第二の壁である「速弾き」が出来るようになってきます。
ままならない小指が動くようになる時期には、
他の指はもっと速く正確に動くようになってますからね。
そうして半年から1年後になると、ギターソロやインスト(歌が無い楽器だけの曲)を最初から最後まで弾けるようになり、人前で披露することも可能になりました。
そして、その頃に僕は・・・・・・・・・ふと気付いちゃったんです。
ギター(弦楽器)の
第三の壁であるラスボスに! 「あれ……もしかして速弾きより、遅いメロディーの方が逆に難しくない?」
これですよ、コレ!
これこそがギターに限らず、楽器全般に言える真の壁なんです。
人前でギターを弾いて聴かせる時、速弾きすれば一つか二つミスしても「お、上手いね」と言ってもらえるんです。音が矢継ぎ早に続くから誤魔化せちゃうんですよね。
しかし、これが遅いメロディーになると、そうは問屋が卸しません。
一つ一つの音の音程、長短、リズム、強弱の全てを完璧に弾かないとダメなんです。
そうしないと、音痴のカラオケみたいになり「あ、もういいわ」ってなるんですよ。
分かりやすく例えると、童謡の「赤とんぼ」ですかね。
♪ ゆうやーけ こやけーの あかとーんーぼーー
♪ おわれーて みたのーは いつのーひーかーー
ここを赤ベラで歌って、聴き手の心を打つことができますか?
楽器のように音(声)が良くて、音を外さないという条件でも相当に難しい。
これだけスローで起伏に乏しいメロディーだと、
真のリズム感と音楽センスが試されまくるのです。
速弾きは、音の高速連続なので長短はもとより、
リズムや強弱もさほど求められません。
必要なのはテクニックです。これは反復練習で身につきます。
ところが遅いメロディーは、正確なタイミングで音を出す・伸ばす・止めるリズム感と情感に訴えるイントネーションを付ける音楽センスが必要です。これは普通の練習ではなかなか身につかないのです。
恐らく、持って生まれた部分も大きいんじゃないでしょうか。
残念ながら、僕にはリズム感と音楽センスがあまり無く、それを磨く練習法も分からなかったので、泣く泣く筆を、もとい、ギターを折って受験勉強を始めました・・・・・・
そんな僕が、数十年後にヒマリさんのこの動画を観たわけです。
ブッ飛びましたよ。
「え、8歳? 8っさぃいい!?」と本田△か、しじみ習慣ばりに。
もちろん、テクニックも裸足で逃げ出すぐらい凄いんですけど、
それ以上にリズム感と音楽的センスにブッ魂消ました。
あれだけリズムを感じないスローなメロディーでも失わないリズム感 感情を激しく揺さぶるイントネーションを加え続ける音楽的センス 一体どうやったらその年でアレを完璧に習得できるんですか?
どうやってザハ爺たちプロを唸らせるほどアレを極めたんですか?
本当に素で知りたいです……
えーと、話を戻しますね。
表現力に必要なテクニックとリズム感と音楽的センスについて少し語りました。
残るは「自制心」、これですよ。
これは本当に大事です。
ヒマリさんには、人生二周目かってほどの強靭な自制心があるから、
持ち前の凄い表現力が「芸術的な表現力」にまで昇華されてるんです。
それを分かってもらうには、説明の前にまず実際に体験してもらいたい。
自制心の足りないものが人前で演奏したらどうなるのかを。
だから、観てほしいのです。
このコンクールに出場した他の子供たちの演奏を。
その子たちは全員、音楽学校などに通っている専門家のタマゴたちです。
テクニックやリズム感、音楽的センス、自制心を程度の差こそあれ皆持っています。
ただ、ヒマリさんほど徹底した自制心を持った子は・・・・・・・・・いないかな。
実力はあるのに、心が不十分だと残念なことになります。
不十分どころか欠けているとかなり悲惨なことになります。
それを貴方自身の目で確認して下さい。
このコンクールには、ヒマリさんを含め16人が出場してますから、
同世代(皆2~5歳年上ですが)の比較対象としては十分かと。
え、観てやってもいいけど、時間はどのぐらいなのか、ですか?
いや、そんな大して長くないですから安心して下さい。
ほんの3時間34分39秒です。 あぁ、待ってぇ、帰らないでぇぇええええ!
分かります、分かりますよ。
現代日本人はとにかく忙しいですもんね。時代は時短ですから。
特に若い世代なんてそうでしょうとも。
映画やドラマを2倍速で見るのが当たり前だそうじゃないですか。
僕の知人のオッサンですら、エロ動画を3倍速で観てますもんね。
だから、そんな人たちの為に、頑張ってダイジェスト書きましたよ。
これを読めば、前述した謎の答えだけでなく、
一次予選で起きていた
様々なドラマ を知ることができます。
最初から流れを追って行くことでヒマリさんの感動も割り増しされること請け合い。
さらに、出場者の子供たちだけでなく、審査員のチェロ兄貴やセル爺、ガス師匠にも愛着を感じるでしょう。そうなればもうこっちものです。
貴方はきっと3時間34分39秒の動画の再生ボタンを押したくなる筈。
以下を読んでも貴方が興味を持てずに動画を観なかったら、僕の負けです。
じゃあ早速、勝負を始めましょう────ファイッ!
(以下に審査員のコメントを少し翻訳していますが、実際の寸評はもっと長く、特に最初は誰でもとにかく褒めています。批判だけ聞かせると子供たちの心が折れるからでしょうね。クレームも来るでしょうし。でも長くなるんでその枕詞は割愛し、キモの言葉だけ一部抜粋してます。また、ロシア語を機械翻訳で英語にし、それをまた僕が和訳しているので、正確性の保証は1ミリも出来ません。まぁ、半分ネタだと思って楽しんで下さい。だから、読んだ人が真に受けずネタと分かるような口調と妄想モノローグで書いてます)
第20回若手音楽家たちの国際テレビコンクール「くるみ割り人形」
(開催日:2019年12月3日~10日)
1.アンナ・アダミャーン(13歳) ロシア
注目のトップバッターは、いきなりチェロですか・・・・・・
しかも、ピアノ伴奏の女性が妙な存在感を発揮してて目を奪われる。
・ラフマニノフ「プレリュード」
うーん、普通。他に言葉が出てこない。
一人目でいきなり語彙力の限界を感じさせられました。
うっ・・・・・・二曲目が何か分からない・・・・・・誰か教えてつかーさい。
中東か中央アジア辺りの雰囲気? 面白い曲だけど演奏は今一つかな。
苦虫を噛み潰したような顔をしてダメだこりゃと右手でジェスチャーするザハ爺w
演奏中にこんなリアクションされたら子供たちも堪らんよね。
コンクールの審査員でこんなことする人、初めて見たよ。まさに
ザハ畜 。
これは厳しい採点になるんじゃないでしょうか。
あ、ちなみに、採点は一人12点満点で合計36点満点という評価方法です。
10・10・10 30点 (左から、チェロ兄・ザハ爺・ガス師匠です。以下注釈略)
司会者「ゲリンガス先生、同じチェリストとして、なぜ10点なのか教えてください」
ガス師匠「とても上手に演奏していたとは思う。だが、ラフマニノフの曲は、インスピレーションを与えるのが本当に難しいんだ」
2.リュドミラ・ヴィゴブスカヤ(10歳) ロシア
ハッと目を引くかなりの美少女ですね。
ヴァイオリンを持つ姿も可憐で絵になるなぁ。
それだけに自然と演奏にも期待してしまいますよ。
・マスネ「タイスの瞑想曲」
この曲知ってる! 甘く美しくも切ないメロディー。
あの諏訪根自子さんが日本で初めてレコーディングしたんだよね。
音楽センスが試される曲だけど、かなり頑張ってますよ。
ただ、いかんせん10歳の表現力ではちと厳しいか・・・
あぁ、だから目の前でそれは止めてやれザハ爺!
相手はまだ10歳の子供なんやで。心折れてまうやろ・・・・・・
・ブラームス「ハンガリー舞曲 第5番」
これまた有名な曲で日本人でも大多数が聴いたことのある名作。
いや、普通に上手いですよこれ。
11・10・11 32点 ザハ爺「メッチャ良かったで。でもまだ音のコーディネイトが未熟やな。ビブラートが甘いし、演奏中ずっと、特に長音が安定しとらんかった。ダブルノート(二全音符)のイントネーションも苦しいわな」
チェロ兄「(高得点の)11点にしたのは、この若い女性をマジ推したいから」
ハンガリー出身のチェロ兄貴イシュトバーンさん、これはハンガリー加点なのか、単に可愛い女の子に絆された
推し加点 なのか・・・
3.サイーダ・アフメドヴァ(12歳) アゼルバイジャン
これまた何か雰囲気がある美少女。
黒い服と赤いリボンが魔女宅っぽくてイイ。
アゼルバイジャンから来たってのもミステリアスな魅力を醸してる。
そんな彼女が演奏するのはこの曲です。
・ラロ「スペイン交響曲」
聞いたことないタイトルですが、あの容姿でスペインと聞くと、
カスタネット叩きながら踊る姿を想像しちゃいますよね。
冗談はさておき、何かやってくれそうオーラを感じます。
そう期待しながら出だしの音を聴いて─────ズッコケたw
申し訳ないけど、ちょっとこれは上手いとは言えないかな。
(もちろん、他の出場者に比べて、コンクールレベルでという意味で)
そして、安定のザハ爺でした。
10・9・9 28点 出た
9点 !
このコンクールで9点以下が出ることは滅多にありません。激レアです。
大会を通じて、2~3回出るか出ないかぐらいのSRカード。
実際、今大会も9点が出たのはこの時だけでした……
それだけ御大二人には耐えがたい演奏だったのでしょうね。
ガス師匠「少女には難しい曲だよこれは。ミスが多過ぎる。ピアノの音より自分の演奏に集中しなさい」
チェロ兄「励ましたかったから10点をあげた。本当は9点にしようかと迷ったけどね。やりたい事と自分の実力のギャップを冷静に考えてみて」
またも美少女にデレデレで推し加点するチェロ兄貴なのでした(笑)
後で気付いたけど、この子だけ他の女の子と違う身体的特徴がある…
間違い探しだと思ってトライしてみて下さい。
4.ジアーナ・バラカト(12歳) エジプト
スカート短いのが、もの凄く気になります!
(靴も上げ底になってるぽくて違和感が・・・)
膝上丈のスカートでクラシックのコンクールに出場って、日本や他の国でも割と普通なんですかね?
僕は初めて見たんで思わずギョッとしちゃいました。
この配信映像も可能な限り全身を映さない様なカメラ割りになってるし。
まだステージに登場しただけなのに、一斉に何かをメモる審査員の三人。
ミニスカ減点 と書いてるような気がしてなりません。
いや、チェロ兄貴だけは、むしろ加点か……採点結果が楽しみ。
・サラサーテ「序奏とタランテラ」
これはヒマリさんと同じサラサーテ作の難しい曲。
難易度の低いツィゴイネルワイゼンといった構成ですね。
スローな前半はキツイ、アップテンポでトリッキーな後半は速弾きも綺麗に出来てて中々上手い。
そして、またもや渋い顔をまったく隠そうとしないザハ爺w
10・10・10 30点 ザハ爺「あのな、君はコメディアンちゃうで。しっかり両手をコントロールせーや。耳障りな音が多いでほんま。おーん」
ですよねー。
でも、技術はあるし素質も感じるんで、次は変化球じゃなく直球勝負して欲しい。
あと、スカートも長くした方が良いと思います。(笑)
(もしかしたら普段着かも。トラブルで衣装がダメになったとかで)
5.エカテリーナ・スロブジナ(11歳) ロシア
えっ、11歳? 11っさいぃぃいい!?
でっか、バレリーナみたいに首と手足ながっ、さすがの恐ロシアですわ。
日本だとこの子が
ランドセル背負って小学校に通う のか……(;゚д゚)ゴクリ…
・パガニーニ「カプリース」
これは正直微妙。ザハ爺も厳しい顔してる。演奏中の子供の目の前でw
・ラフマニノフ「ヴォカリーズ」
あれ、これは良いんじゃないですか?
切ないメロディーがじわじわと心に沁み込む曲。
ザハ爺もこれにはニッコリ。しかし…
10・10・10 30点 チェロ兄「選曲ミスだと思う。彼女は背が高くて美しい女性だけど、まだ11歳。ヴォカリーズは深い感情を表現する必要があるからその年頃では難しい。ヴィブラートや表現力が十分じゃなかったよね」
6.ラウラ・コストナー(13歳) オーストリア
さあ、ここでついに優勝候補の一人が登場しました。
ラウラさんは、昨年も出場してこの一次予選を突破した実力者。
舞台慣れしてる分有利だし、ザハ爺とガス師匠の覚えもめでたい。
まさに
音楽の都ウィーンからの刺客! 果たして、どれほど凄いパフォーマンスを見せてくれるのかっ。
・ヴィエニャフスキ「カプリース」
あれれ・・・・・・上手いけどなんか微妙。(笑)
カプリース(フランス語)とは奇想曲/狂想曲のことだとか。
イタリア語ではカプリッチョ。言葉自体の意味は「気まぐれ」。
なるほど。その通り、変な曲だった。少しメロディを付け加えたスケール(音階)練習を延々と聞かされた感じで楽しめなかったよ。
・ヴィエニャフスキ「ヴァイオリン協奏曲:ロマンス」
これは凄く良い!情感タップリな聴かせる曲でした。
曲の最初から最後まで集中して楽しめたのは初めてだよ。
珍しくザハ爺も食い付いてましたねw
これは良い採点が出るんじゃないですか?
12・12・12 36点満点! MAXスコア出た!
正直、カプリースが個人的に微妙だったんでここまでとは思わなんだ。
まぁこれは、リサイタルじゃなくてコンクールですもんね。
テクニックを見せる意味ではあれで正解だったのでしょう。
ザハ爺「ワシが満点を付けたのは2つ理由があるんや。一つは音楽性に優れとった。カプリースのようなテクニカルな曲でも上手くやってのけとったわ。もう一つはアレや、そう、昨年よりも遥かに上達しとったからな」
ガス師匠「私はね、朝からずっと待ってたんだよ────
鳥肌が立つのを! それこそ、芸術にとって一番重要なことなんだ。しかし、多くの演奏者はそこが欠けている。まったく芸術性というものが腕に沁み込んでいないんだよ。いいかい、私たちはここで学校の試験をしてるんじゃない。これは芸術的な大会なんだ。だが、やっと現れた。それを理解している者が」
この二人の寸評がまた凄かった。
激辛なザハ爺と生真面目なガス師匠が、ただの一言も批判を口にしませんでした。特にガス師匠なんてキャラが変わったかのようにデレデレでべた褒め。
これは、次の出場者はメチャクチャやりにくいし厳しいですよ。
どうしても比較されちゃいますもん。
その
不運な子は誰なのか と見守っていると………あぁぁぁああああ!?
7.吉村妃鞠(8歳) 日本
何てこったい肩こったい!
審査員や会場の中にまだ最高得点の余韻が漂う中で名前を呼ばれ、
ステージに上げられたのがあのヒマリさんだったんですよ。
それであんな演奏をやってのけたのか・・・・・・
緊張とかプレッシャーとか凄かったろうになぁ。
名前を呼ばれたヒマリさんがポニーテールを揺らしながら登場。
この場で年上のライバルたちとしのぎを削り合うとはとても思えない、
あまりにも小さく無垢な容姿。
それを目の当たりにして激しく困惑する俺たちのイシュトバーン兄者。
「(えぇぇぇぇ、ちっちゃぁ! ちっちゃ過ぎるだろぅ・・・8歳? 8歳って・・・しかも選曲が『ツィゴイネルワイゼン』って難し過ぎるだろぉ・・・ただでさえ、満点の演奏が出た直後でプレッシャーかかるっていうのに・・・失敗して泣いたりしないといいけど・・・これテレビかネットで生放送されてるんだよね・・・・・・ちょっとヤバくない? いや、ホントまいったなぁこれ・・・・・・えぇぇぇぇぇ)」
チェロ兄貴は、これ大丈夫なんですかと隣のザハ爺をうかがいますが、
当の御大は、まぁ見とれと訳知り顔で知らんぷりするのでした。
(観客たちも誰だこの小っちゃな子はとガイドブックでチェックしてますねw
右端は3番手で登場したサイーダさん。真剣にヒマリさんを見つめてます)
ガス師匠は出場者ガイドブックを手に取り何やら思案してる模様。
昨年の体験でピンと来たのかもしれません。(後述)
チェロ兄貴もガイドブックを見てチェックしたいんでしょうが、
恐らくロシア語表記だけで読めないんでしょうね。
そんなちょっと異様な空気の中、ヒマリさんの演奏が始まります。
・サラサーテ「ツィゴイネルワイゼン」
最初の音で、あっと思わされる。
最初のメロディで、それを確信する。
最初のフレーズで、その世界観に引き摺り込まれる。
この時点でもう、これまでの出場者とは違うとハッキリ分かりました。
何が違うって、何もかも全てが違いますよね。
まず、
音がとにかく美しい 。澄んでいて迫力もある。
この時ヒマリさんが使ってるのは、1/2か3/4の子供用サイズの筈。
4/4のフルボティを使ってる(よね?)子よりも鳴り響いて聴こえるよ。
これは正確で丁寧な指運びと弓さばきによる純粋なテクニックなのか?
握力も腕力も弱い8歳の少女ってことも考慮すれば、奇跡と言いたくなる。
リズム感と音楽的センスは、くどくなるからもう言わないけど、
それらに裏打ちされた表現力が他の子とは段違い。
さらに、そこに徹底した自制心が加わることによって、
レベル違いどころか次元が違ってしまってる 。
いやこれ、言葉遊びとか誇張表現じゃなくて、本気でそう思わされました。
皆にも一次予選の動画を観て比べてほしいから、ここではもう触れませんけど。
芸術的な表現力で審査員と会場の雰囲気を一変させたヒマリさん。
ピーンと張りつめた空気が漂い、誰もがステージ上を見つめます。
そんな中でも、空気を読まずに得意顔でチェロ兄貴に話しかけるザハ爺。
「どや、ワシのヒマリは凄かろ?」とでも言ってるんでしょうか。
そう、このザハル・ブロン氏はヒマリさんと面識があるんですよね。
この大会(2019年12月)の約半年前(同年6月下旬)に、
ヒマリさんに指導までしてる んです。その実力を知ってるんです。
そんな訳で、登場したヒマリさんがライバルたちよりどんなに小さくても、どんなに難しい曲を選んでいても、平気の平左でニヤニヤとばっちい笑顔を見せていた訳です。
ハンディカムで撮影してるヒマリさんのお父さん(音楽家)が映りましたね。
カメラで抜かれていることを悟って視線を外してましたんで、
なぜか自分が映されてるの分かる模様。どういう仕組みなのかな。
ツィゴイネルワイゼンは「
ジプシーの歌 」という意味だとか。
流浪の民の悲哀と嘆きの旋律を見事に表現した音色に聴衆は嫌でも感情移入させられる。目に涙を滲ませながら微動だにせず聴き入るガス師匠の後ろでは、感極まった女性が涙を指でぬぐってましたね。この方は後の採点の時にも鼻をすすってましたんで間違いなく泣かされてました。
皆が固唾を飲んでステージを見つめる観衆の中で、最後尾に立っているヒマリさんのお母さん(ヴァイオリニスト)だけが、メロディに合わせて体を揺らしてました。
魂を抜かれたように固まる他の聴衆とのコントラストが秀逸。
審査員三人の後ろ姿の絵面も三者三葉で面白い。
生真面目に寸評を書き留めるガス師匠、お母さんと同じようにメロディに体を委ねるザハ爺、そして微動だにせずヒマリさんをうっとりと見つめ続けるチェロ兄貴。実はこの辺りからもう
イシュトバーンは壊れ始めていた のです(嫌ってほど後述)。
序盤・中盤のスローテンポから、いきなりアップテンポの終盤へ入る。
これまでとは一転して軽快に跳ね上がるような速いメロディが続く。
それらの速弾きを一つ一つの音の粒を揃えて綺麗に弾いていましたね。
流浪の民の自由と楽しさを表現したような旋律に爽快感を覚える。
まるで、野原を自由に駆け巡っているようなイメージが自然と湧いてくる。
これが本当に凄いことなんです!
他の出場者もこの曲に挑戦することが割とあるんですが、
その子たちの速弾きを聴くと同じ走り回るのでも、
まるで何かから走って逃げているような圧迫感を覚える。
まるで自由や楽しさを感じないんですよね。
なぜそうなるのか、この点はまた次回以降で。
チェロ兄貴も僕と同じようにすっかり気持ちよくなってしまったようで、
口元がゆるみまくったデレデレの笑顔を晒し続けていました。
そしてカメラに抜かれてることに気付くと、急に真顔になり、ちゃんと審査してますよぉ、うっかり聴き惚れたりしてませんよぉとアピールするのでした。
あぁ、ハーモニクス(倍音)の音が美し過ぎるぅぅぅううううう。
これを強く綺麗に出して伸ばすのはかなり難しい。少なくとも僕には。
それをメロディの合間合間で連発させるとか、作曲者はほんま鬼やでー。
左手の指で弦を押さえずに触れるだけにすると倍音が出るんですが、
「
指先は触れるだけ 」ってのが曲者なのは何となく分かってくれますよね。
ピチカート(指で弦を弾く)もあんなに連発させるとか、作曲者は(割愛
難しいだけじゃなく、8歳の少女の握力で良く持つなぁと感心させられた。
そして最後、速弾きのスピードをさらに上げて駆け抜けるようなフィニッシュ。
これまた本当に凄かった!
加速した上にまた一つ一つの音を全て粒を揃えて丁寧に綺麗に弾き切った。
だからこそ、とてつもない「カタルシス」を皆が感じたんでしょうね。
そのフィニッシュの時の審査員と客席の反応も面白い。
「よしココが最後のキモだ。そのまま来い、来い、来い…キターーッ!」
そんなザハ爺のリアクションが僕は大好物です。何度でも観れます。
後方で立っているお母さんもそんな感じになってましたよね。
ガス師匠とチェロ兄貴は、身動きせずジーっと見つめていて、最後のジャン・ジャン・ジャン!の一拍後に「プハァ」と息をして頭を後ろにちょっとだけのけぞらせてました。
息をするのも忘れるぐらい没入させられてたんでしょう。
というか、最後の音で催眠状態から解放されたような、引き摺り込まれたヒマリ・ワールドから現実に戻ってきたような様子に見えて興味深い。
後ろの客席のスキンヘッドの初老男性とスポーツ刈りの男性も同じような反応をするんですが、そのシンクロ率が凄くて芸術点高いですよホント。
その直後は、前述した謎の通りです。
ザハ爺は口パクでブラボーを連発し皆が困惑するほど拍手を続けました。
なぜ口に出してブラボーと言わなかったのか? 言えなかったのか?
付け加えると、ガス師匠は口をキュッと結んで開こうともしませんでした。
あれだけ感動していたのに何故ブラボーと呟きすらしなかったのか?
その点の推測は、13番手に登場するアンゲリーナさんのところで書きますね。
次は審査員三人による採点です。
まぁ、結果は分かっちゃいますが、こうなりました。
12・12・12 36点満点! その後の審査員たちのコメントも前述通りなので割愛しますが、
13点発言の謎ともう一つ非常に気になるキーワードを言ってるので、
その部分だけ僕の翻訳で紹介しますね。
司会者「採点は、12、12、12、36。最高スコアです。イーシュトヴァン! ・・・・・・・・・えー、何か言いたいことはありますか? それとも
言葉を失っちゃいましたか? 」
この司会者の言葉を聞いた(字幕を読んだ)時、あぁやっぱりなと確信した。
ザハ爺がブラボーと声を出さなかったのには、間違いなく理由があるのだと。
チェロ兄貴の名前を呼んだ後の長い間とその後のセリフが「妙だな…」ですもん。
きっと「言葉を失ったか?」という部分は、ザハ爺の口パクへの暗喩です。
そう考えると、その前の「何か言いたいことはあるか?」も意味を持ちます。
ブラボーと声に出せないことに何か文句があるんじゃないのと。
でも言えないでしょ、ここは大人になりましょうよと。
イシュトバーンに言ってる体で、ザハ爺をチクリとやってるんですよ。
これは、長々と拍手をして生放送の進行を妨げたことへの小さな仕返しかな?
チェロ兄貴「ぼ、僕は、僕は……13点を探しちゃったよ……13点をあげたかったんだ。僕は…僕はもぉ……簡単に言っちゃうと…すごく、凄く感動したんだよ。それにさ、こんな演奏はこれまで観たことがないよ……って言わなきゃね。あぁ、それから、僕は、ちょっと心配もしてるんだ。アハッハハハッ。だって、あんなに若くてこんなに上手いんだもん……絶対にこのまま成長させ続けないと。そうしてほしい。そのためにも……彼女を励ましてあげなくちゃ……あ、でもあまりプレッシャーをかけちゃダメだよ。スペシャルな才能なんだから(潰さないでね)。あぁ、もちろん、僕は確信してるよ。今彼女は信頼できる指導者に委ねられてると。(だからこそ)彼女には強い
ディシプリン (ここで強引に女性通訳に遮られました。その後も続きを言わせてもらえず、ガス師匠のコメントに移った)」
ガス師匠「本当に私も(12点満点じゃない)別の札をあげたかったよ。だが、13は不吉な番号だからね。(13の札が無いことを)天と神に感謝しよう」
さて、この二人がヒマリさんの名演に13点を出したかった本当の理由ですが、
一次予選のここまでの流れを見てきた皆さんは、もうお分かりですね?
え、ヒマリさんの解説が長すぎて流れなんてとっくに忘れた?
そうですか…そうですか。
ヒマリさんの直前に演奏したラウラさんのことを思い出してあげて下さい。
彼女も36点満点を出してたじゃないですか!
そしてザハ爺の絶賛コメント以上に、ガス師匠はデレデレの笑顔でべた褒めしたんですよ。特に彼女の表現力を「鳥肌が立った」とまで称賛してたんです。
ところがですよ、その直後のヒマリさんがそれを遥かに超える表現力を見せつけた。ラウラさんを軽く凌駕する名演をされたら、そりゃ本気で13点出したくなりますよ。同じ12点の評価をするのは審査員として心苦しいですよ。
ある意味、恥 ですよ。だって、ラウラさんとヒマリさんに大した差は無いと言ってるようなものだもの。そんな複雑な心境から、思わずポロッと本音が漏れたってのが真相だと思います。
とにかく、もの凄い感動プラスそういう流れもあった訳です。
それはチェロ兄貴も同じです。
ラウラさんに初めて12点満点を出したのを後悔したでしょうねえ。まさかあれを遥かに上回る演奏をその後の子供たちがするとは想像してなかった模様。そのせいか、この後のイシュトバーン兄者は心の歯車が狂っていくのです……
そんな壊れかけのイシュトが言いかけて、女性通訳に遮られた話が「discipline」。ディシプリンとは、(鍛えて身につけた)自制心のことです。
そう、僕が何度も何度も大事だと言い続けてきたものです。
素人の僕が気付くことをプロの彼が気付かない訳はなく、ヒマリさんの自制心は素晴らしいという話をしようとしたんでしょうね。
だけど、続きを言わせてもらえなかった。
この理由は、何となくだけど分かります。
恐らく、
子供に強い自制心を求めるのは酷 だからです。
ザハ爺やガス師匠も自制心が大事だ、お前らもっと磨けと思ってるでしょうけど、この大会を通じてただの一言もディシプリンについて触れませんでした。
(過去の大会でも僕が調べた限りベテラン審査員は言及していません)
自制心を持っている子を褒めると、持ってない子を批判する空気になる。
だがら、批判はもとより称賛もしないNGワードっぽくなってるのだと思います。初めて審査員になったハンガリー人のイシュトバーン氏には知る由もない、ロシアのコンクールのプロトコル(お約束)だったので、チェロ兄貴は口に出した(そして止められた)んじゃないかと。
さて、そんな自制心については最後の方でまとめるとして、
ヒマリさんの演奏と採点と寸評の解説はこれにて終了。
次の出場者へと移りましょう。
あ、でもその前に、もう一つだけ。
ピアノ伴奏をしてた女性がメッチャ綺麗でしたよね?
僕が一目惚れした彼女の名は、
イレーナ・ポプコヴァ というそうな。
このイレーナさん美しいのは容姿だけじゃなく、ピアノ自体も素晴らしかった。ただ上手いだけでなく、通常は出しゃばらず後ろで支えるようなプレイをしながら、出るべき時は前に出て演奏に華や迫力を与えてました。そのサジ加減がまた絶妙でしたよ。この大会で一番と言っていいほどのピアニストだったんで、ヒマリさんはホント恵まれてました。この時は本当にそう思いました。
では、今度こそ次へ行きましょう。
しかし、これから出てくる子は、ラウラさん(36点満点)の後のヒマリさん以上にやりにくいでしょうねえ。
会場があったまり過ぎですもん。
鳴り止まない拍手とザハ爺たちの超絶賛の直後ですもん。
何だかちょっと応援したくなってきましたよ。
8.ウラジーミル・トレチャコフ(11歳) ロシア
あ、良かった!
この子、ヴァイオリンじゃなくてチェロだ。しかも少年だ。
楽器と姿が様変わりすれば、自然と空気も変わって落ち着くかな。
うん、やっぱりそんな雰囲気になってるね。よかよか。
余談ですが、この子は3年前(2016)にも8歳にして出場してます!
その時にも審査員をやってたザハ爺は、
どうやら憶えてない っぽいw
まぁ、一次予選で落としちゃってるもんなぁ。印象に残ってないか。
ガス師匠が「ガイドブックに第17回に出たと書いてあるけど、あんた審査員やってたよね。憶えてないの?」と聞いて、ザハ爺が「ほんまか?全然記憶にないで。おーん」と言って笑ってるような寸劇(上の画像)がありました。
そんな思い出加点を貰えそうにないウラジミール君の明日はどっちだ…
・メンデルスゾーン「無言歌」
肝心の演奏のほうは、むーん、普通……かな。
ヒマリさんの圧倒的な表現力の後だから余計にそう聴こえちゃう。
でも決して悪くない、悪くないよ。
そして、安定のザハ爺。
手はメモを取ってる風だけど、頭を下げて目をつぶってないこれ?
・ダヴィドフ「泉のほとりで」
このコンクールでは例年、チェロ奏者がこの曲をやることが本当に多い。
かなり速くトリッキーでキャッチーな主旋律が冒頭から始まるので、
最初から聴き手を惹きつけてテクニックを見せられのが理由だろうか。
ただ、その速弾きがちと荒く感じました。
ヒマリさんの自由な疾走感ではなく、不自由な切迫感を覚えちゃう。
そんなウラジミール君の採点はこうなりました。
11・10・10 31点 司会者「(チェロ奏者の)ゲリンガス先生、どうして12点じゃないんですか?」
ガス師匠「いや、私は11点すら出してない。10点だ10点。チェロ界の帝王ダヴィドフは言った。テクニックは音楽に仕えるべきだと。君のテクはまだ不十分だ。
私の師ロストロポーヴィチは言った。ファーストノート(最初の音)が大事だと。ファーストノートは全てを伝える。雰囲気やテンポなどの全てをだ。君のメンデルスゾーンはその点がとても残念だった。これからはもっとファーストノートに注意を払いなさい」
チェロ兄「フルーツを持ってたら、まず皮を剥かなきゃだよね」
何を言ってるんだ兄者は?
僕にはサッパリ分からないよ。
それに、良い指導者につけば問題点は改善される(音楽学校全否定)とか、
暗に
チェロとヴァイオリンを同じ土俵で勝負させるのはアンフェア (不公平)だと言っちゃってませんかこれ?
司会者サーシャのコレどうしてやろうかって反応が好きです。
司会者「(ヴァイオリンの権威の)ブロン教授、彼が言うヴァイオリンよりチェロの方が難易度が高いに同意しますか?(ニタァ)」
ザハ爺「おーん、ワシもメッチャそう思うで。ウシャシャシャシャ」
ホント面白いなこの人たち。
ザハ爺はもちろん、最初は醒めた司会でつまらなく見えた塩サーシャも、
よく観察すると何気に毒をブッ込んできてるの分かるし。
そしてチェロ兄貴はヒマリ・ショックでかなりヤバイこと言っちゃうし。
とまぁ、そんなドラマも交えながら、コンクールの前半戦が終了したのです。
---------------------(15分の休憩に入りました)------------------------
はぁ、僕もちょっと休憩がてら閑話休題。
一体どれだけの読者がここまで付いて来てくれてるんでしょうねえ?(笑)
全国1千万の読者が3人ぐらいに減ったんじゃないかと心配で眠れません。
この続きを書く意味があるのかと自問自答が止まりません。
だけど……ヒマリさんの偉業に報いるためにも書き切らないと……
そんな訳で、張り切って続きに行きまShow Must Go On!
さあ、後半戦が始まります。
その開始早々、満を持して
優勝候補筆頭の大本命 が登場!
彼は色んな意味で要チェックですのでお見逃しなく。
9.リチャード・コレット(11歳) チェコ共和国 首都プラハ
リチャード君が登場した時のザハ爺が、緩み切った最高の笑顔で草なんだ。
もちろん、これには理由があります。
彼は正面ではなく、なぜか舞台袖の方を見て笑い拍手をしています。
そこには、ザハ爺の弟子であるエドアルド・コレットがいたんですよ。
そう、コレット。彼はリチャード君のお兄さんです。
そして、2015年のこの大会で二次予選も突破し(3人)、決勝にまで進んだのですが、惜しくも銅賞(3位)になったヴァイオリニストでもあるんです。
ザハ爺はその時も審査員やってましたから、思い出も思い入れもあるでしょう。
しかもですね、エドアルドが二次予選で演奏した曲が「
ツィゴイネルワイゼン 」!
ザハ爺の中で今と昔が交錯して何やら楽しくなっても不思議じゃないです。
「13歳の時のお前より、8歳のヒマリの方が上手かったぞ」
そんなジョークでも飛ばしそうな勢いですよ。
実際、エドアルドもヒマリさんの演奏を聴いて驚いた筈ですよ。
自分がやってるだけに、その凄さを掛け値なしに理解できるのだから。
ちなみに、ピアノ伴奏はコレット兄弟のお父さんだったりします。
エドアルドはその補助(楽譜めくり)ですね。弟の応援も兼ねてるのかな。
弦のチューニングまで、もうちょい巻けって感じで手伝ってましたね。
そんな微笑ましい一幕から、優勝候補ド本命の演奏が始まります。
あ、リチャード君本人も昨年の大会に出場して一次予選を突破してます。
満点を出したラウラさんと同じく、場慣れしてるし審査員の覚えも目出度い。
これまた、
音楽の都プラハからの刺客 って感じですね。
という訳で、ヒマリさんの強烈なライバル登場の巻なのです。
・ドヴォルザーク「《ルサルカ》月に寄せる歌」
…………えっ? …………あれ、あれれ? …………うーん、これって……
かなり微妙に聴こえるのは僕にクラシックの素養がないからだろうか?
ヴァイオリンの音に魅力が無いというか、むしろ変じゃない?
あ、困惑してる内に終わっちゃった。(^_^;
いつもならダメだこりゃとやりそうなザハ爺が、ここだ来い、頑張れ!と
励ましてるっぽいのが面白い。でもそれ、贔屓じゃないの?(笑)
・パガニーニ/クライスラー「ラ・カンパネラ」
銀河鉄道の夜じゃないよ。カムパネルラ違うよ。カンパネラだからね。
そんなことより、優勝候補筆頭がこの曲をやったことを憶えていて!
実は二次予選で、これをヒマリさんが弾くという
熱い展開になる んです。
同じ曲をぶつけて優勝候補を直で潰しに行ったよね。(;^ω^)チガウ
次回の記事でその辺も書きますので、頭の片隅に入れておいて下さい。
肝心のリチャード君の演奏ですが、さすが本命で非常に上手かった。
ただ、ですね……やっぱり音があまり好きじゃないです。
大袈裟に言うと、ひび割れたような、かすれたような音がよくするんです。
それがマッチする部分もあるでんすが、ここは澄んだ綺麗な音が欲しいって時もかすれた音が出ることがあって、どうにものめり込めない。あと、一番細くて高い音が出るE線(弦)がたまに「プニィー」と間抜けな音に聴こえちゃう。シリアスなメロディラインでそれやられると午後ティー噴きそうになるんだ。
うーん、専門家たちの採点がどうなるのかメッチャ気になりますね。
11・12・12 35点 うおっ、想像以上に高かった!
チェロ兄貴以外は満点ですか………ちと意外な結果でしたよ。
司会者「ブロン教授、12点満点を出すのはこれでもう三度目ですが?(え、これが満点なの、ヒマリと同じなのと言わんばかりのサーシャw)」
ザハ爺「おーん、ワシには彼がとても明るい演奏しようとしとるように感じたわ。そして実際、高い質を見せてくれたわな。でもな、イントネーションが甘い所も結構あったで。ほんで11点にしようかとも思ったんやが、去年からえらい成長しとるんで満点にしといたわ」
思い出補正で加点 するザハ爺。
それ、やっぱり贔屓じゃないですかっ。(笑)
司会者「(イシュトバーンだけ11点かよ……チッ、御大二人の満点に公然とケチつけるとか俺にもできんことをやりやがって。まぁ満点は俺もおかしいと思うからフォローしてやるか)あなたは去年の彼を知らないですもんね。それで、初めて見た感想はどう?」
チェロ兄「凄い才能を持ってると思う。僕が満点を出さなかったのは、全体的にもっとバランスを取るべきだと思ったから」
クラシック界の権威である御大二人が12点満点を出したにも拘らず、
忖度せずに11点を高く掲げた俺たちのチェロ兄貴イシュトバーン。
ヒマリに13点を付けられないなら彼に同じ12点はあげられないという男ぶり。
休憩後もヒマリ・ショックが尾を引いてるんですよね。分かります。
10.マリー・ミリニューク(13歳) ロシア
この子の演奏中に何かあったんですかね?
生放送ゆえの事故かもしれませんが、映像が何度か途切れちゃうんですよ。
お陰で、採点結果も分からないままです。
・エルガー「愛の挨拶」
ああ、この印象に残るメロディはよく耳にしますよ。曲名初めて知った…
演奏の方は、まあまあだったと思いました(小並感)
・チャイコフスキー「ワルツ・スケルツォ」
例年、この曲をやる子も本当に多いですね。
コンクール向きの評価されやすい構成だってことかな。
うーん、上手く弾いてるとは思うのだけど、今一つ楽しめない。
だけど、最後のフィニッシュで振り上げた弓が吊りマイクに当たって、
「ビキッ!」と鳴り響いたのは楽しめました(上の画像)。
採点不明 ただ、この一次予選を突破してたんで良い点だったのでしょう。
11.ソフィア・コルタコヴァ(12歳) ロシア
ロシア人てやっぱり大きいなぁ。12歳にしてこの体格と貫録。
立ち姿とパワーとスタミナでアドバンテージあるよね。
ちなみに、二年前(2017)の大会にも出場し一次予選を突破してます。
だから、場慣れと審査員ウケでもアドバンテージありますよ。
・チャイコフスキー「なつかしい土地の思い出:メロディ」
かなり上手いけど、どこか単調に聴こえる。ミスタッチもチラホラと。
・ヴュータン「ロンディーノ」
これは本当に上手い! ちょっと驚いたよ。
ただ、途中でヤレヤレと額に手を当てるザハ畜はお約束。
おおぅ、演奏が終わった後の観客の拍手が大きい、長い!
僕的にもかなり高評価なんで採点結果に期待大…………ええっ!?
10・11・11 32点 司会者「(マ、マジかよ……また御大二人にケチつけやがった……さすがにそろそろ止めねえと…)ふぅ、イーシュトヴァン! 君は審査員の中で最低点だけど、今まではむしろ最高点を付けてたじゃないですか。なんで10点なんすか?(御大二人より甘い点をつけるのはまだ良い。だが
辛い点をつけるのは見る目ないと批判してる ようなもんだぞ。それ分かってんのか!?この俺の言葉で分かれ!)」
チェロ兄「えーと、もしも、力強さだけで、観衆を魅了する演奏ができたら、人生楽勝だよね。アハハッ。あぁゴメンゴメン、僕はただこの若くて素晴らしい女性に忠告したいだけなんだ。優美さと賢さと強さのバランスを取らなきゃいけないよってね」
司会者「(賢さと強さのバランス取らなきゃダメなのはお前だ!このバカチンがッ!せっかく俺が暗に御大二人と同じか甘い点を付けろと教えてやってんのに……クソッ)ありがとうございました」
司会者サーシャの腹芸など1ミリも感じ取ってないチェロ兄貴。
12歳の少女に良い笑顔で辛辣な皮肉 をブチかましてました。
本当にどんどんオカシクなっていってますなぁ。
12.アニーシヤ・アルチョウモワ(10歳) ロシア
綺麗なウェーブヘアが特徴の可愛い女の子ですね。
登場した途端に何やらメモるチェロ兄貴とザハ爺が気になる。
ひざ丈だけど、これでもまだスカートが短いのだろうか?
・ヴェラチーニ「ラルゴ」
あぁ、この曲も初めてタイトルを知ったよ。
演奏自体は、まぁ、うん、普通でした。
ていうか、
この子も音 ですよね。
なんでヒマリさんみたいな綺麗に澄みきった音が出ないんだろ?
スローでメロディアスな曲なのに、音がかすれてるから魅力半減。
・クライスラー「序奏とアレグロ」
一度聴いたら忘れられない特徴的なメロディで始まる名曲。
ただ、その原曲のポテンシャルを発揮できてないです……よね?
単純に技術がまだちょっと足りない感じ。
それが逆に、素朴な良さを出しちゃったりもしてますが。
とまぁ、僕の評価はそんな感じですが、プロの採点は─────
10・10・10 30点 やっぱり、そうなりますよね。
ザハ爺「序盤から聴き手の心を捉えとったけど、集中が続かんかったわな。聴くべきところはあるんやが、ムラも多いんよ」
今回はコメントを求められなかったチェロ兄貴も10点でしたが、
ヒマリ・ショック前なら「応援したい」とか言って11点あげてたかも。
2番手、3番手の子に推し加点してたみたいに…
13.アンゲリーナ・ロブコ(12歳) ロシア
二つ前のソフィアさんと同じく、でっかいロシア人登場。
この子も12歳とは思えない立派な体格で演奏には有利なんじゃないかな。
登場したばかりなのに、また何やらメモリ始める3人………あっ、今さら気付いたけど、これ単に司会者が言った曲名を書き込んでるだけかも……フヒヒ
・グリエール「ロマンス」
ロマンスの名の通り優美なメロディが心を打つ曲。
かなり上手く聴こえる。情感が漂ってる。ただ表現力が今一つという感じ。
ザハ爺はまた、ダメだこりゃってジェスチャーしてましたね。
ホント子供相手に容赦ない。畜生が過ぎる。
・ヴィエニャフスキ「スケルツォ・タランテラ」 あぁ……ついにこの曲にチャレンジする勇者が現れた!
これは超絶技巧のとんでもない難曲なんですよ。
さらに、この大会にとってはメチャクチャ因縁のある曲。
ある意味、もの凄い呪いがかけられてる。まさに
特級呪物 なんです(笑)
うん、チェロ兄貴みたいに何を言ってるか分からないですよね。
という訳で、回想シーンに入ります。
────前年のこのコンクールに一人の少女が参加した。
彼女はその圧倒的な実力でザハ爺たち審査員と他の出場者たちを、
軽~く吹き飛ばして一次予選を突破する。
そして迎えた翌日の二次予選。
彼女はそこでも特大の嵐を巻き起こし、歴史を作ったのだ。
その「事件」を起こし、呪いをかけた11歳の少女の名は────
村田夏帆 。
夏帆さんは「スケルツォ・タランテラ」を二次予選の二曲目で演奏し、その衝撃が多方面をザワつかせたのですが、まずはご自身で体験してザワっとして下さい。
(できれば大きな音で。ヘッドフォンを使う価値あります)
第19回国際コンクール「くるみ割り人形」二次予選 村田夏帆(
Link )
VIDEO (これもFirefoxだと再生できない。何故だ?すいません上のLinkから…)
ちょっとこれ凄すぎるでしょ。
聞き終えた時に思わずガッツポーズ出るでしょ。これもぅロックでしょ!
こんなのもぉ子供のコンクールじゃなくて、
プロのリサイタル でしょ!!
動画どころか目の前で生体験したザハ爺たちは、そりゃブッ飛びますよ。
そのザハ爺はブラボーと2回ほど言ってたし、ガス師匠に至っては遠くのマイクがうっすら拾うほどブラボー!と力強く言ってました。
かつてガス師匠がこれほど興奮したことがあったろうか? いや無い!
(僕が過去動画を漁った限りでは、皆無でした)
でも、この人は本当に感動すればこんなリアクションをする人なんです。
しかし、ヒマリさんの演奏を聴いた時、これと同じぐらい感動していたガス師匠は、
口を真一文字に引き締めてブラボーと言いませんでした。
ザハ爺もブラボーと口パクを連発させ、長々と拍手をするという審査員としてはかなり不自然な行動に出ました。
さらに、司会者まで「言葉を失いましたか?」なんて意味深な質問をしました。
何故でしょうか?
その原因が、この夏帆さんへのリアクションだったと僕は推測します。
きっと、クレームが来たんでしょうね。
特定の出場者に肩入れするなとか、審査員にあるまじき反応とか色々と。
放送を観たロシアの視聴者や、他の出場者の家族・ファンなどなどから。
ザハ爺とガス師匠が無視できない所からもクレームがきたと思います。
恐らく、「スポンサー」にも怒られたんですよ。
だからガス師匠はブラボーを封印し、ザハ爺は反発して「拍手を続けるのはクラシックのアンコールの作法だから文句ないだろ」的な態度に出たのかもしれません。それも十分に不味いと思うけど。(笑)
そのスポンサーとかは、次々回の夏帆さんの記事でもう少し掘り下げます。
夏帆さんの時の大会も色んなドラマや事件があったんですよねぇ……
ところで、上の夏帆さんの動画で気付きましたか?
ピアノ伴奏が
ヒマリさんと同じイレーナさん なんですよ。
これもう、日本人にとっては勝利の女神様じゃないですか!
ホントこれ観た時はそう思いました。
夏帆さんの熱気にあてられて、ピアノ演奏に熱がこもってるの好きです。
ラストのフィニッシュでは珍しく激しいポーズまで決めてたし。
あ、そういえば、この動画にもバッチリ映ってますよ。
何がって、このコンクールの「闇」がです。
ヒマリさんの時と同じように、隠されずに堂々と。
もの凄くカンの鋭い人なら、この二つの動画だけでピンとくるかも。
僕はさらに過去2年分の予選を観ないと気付けなかったけど……
「スケルツォ・タランテラ」に話を戻します。
夏帆さんの熱演をロシア全国放送で観た子供たちはどう思ったでしょうか?
これほど完璧で迫力もあるパフォーマンスにどんな反応をしたでしょうか?
絶対、ヴァイオリンすげー、かっけー、自分もやりたい!てなりますよね。
俺もバンドやって文化祭で派手に決めたい!てのと同じように。
たぶん、夏帆さんがきっかけでヴァイオリン始めた子が何人もいるでしょ。
「ぼざろ」でギターを始めた人と同じように……
既に音楽学校に通いヴァイオリンをやっていた子たちはどうでしょう?
その子たちは、注目度が高く就職率も高い(際立った者はオケにスカウトされたり、ソリストとして依頼をもらったりしてます)このコンクール優勝が目標の一つでしょうけど、夏帆さんの超絶技巧を見て彼らは二分されました。
奮い立つ者と心を折られる者に。
そして前者の心を燃やした者たちの末路は……
このコンクールで「スケルツォ・タランテラ」を演奏する出場者は、例年1人いるかいないかというスーパーレアな存在です。
それだけ一発勝負の場ではハイリスク過ぎる曲なのですが、夏帆さん以降(2019-22)で、これを演奏して
決勝に進んだ者はただの一人もいません 。
去年(2022)に至っては二人がこの超難曲に挑み、そして散っていきました。
危険なのは分かっちゃいる。分かっちゃいるが自分を止められない!
先生にも止められたけど関係ない。絶対に自分もやってやる!
練習に時間がかかり過ぎて他の曲を仕上げる時間が無い。だけど……
……11歳の小さなナツホにできて自分にできないわけがない!
ていうか、自分も全国放送であんな風にカッコよく弾きたい!
そんな強烈な「呪縛」に囚われたヴァイオリン少年少女たち。
図らずも、夏帆さんの衝撃の余波は一部で呪いにもなっていたのです。
そして、夏帆さんの翌年、ヒマリさんが出場したこの2019年のコンクールに、一次予選の13番手でついに現れました。
アンゲリーナさん(12歳)が「スケルツォ・タランテラ」を演奏します。
ただでさえ難しいのに、どうしても昨年の夏帆さんと比較されますよ。
それを百も承知で挑むのだから本当に勇者だと思います。
さあ、心して彼女の演奏を聴きましょう……………
んっ、んんん、んんんんんんん?
これは、まぁそのぉ、プロの採点に任せましょう。(笑)
10・10・10 30点 ですよね。
残念ながら、アンゲリーナさんの賭けは失敗に終わりました。
彼女はこの一次予選で敗退してしまいます。
でも、その健闘は称えたい。お疲れ様でした。
しかし、このコンクールの歴史を知らない俺たちのイシュトバーン兄者。
チェロ兄「
成長が死ぬ段階 に来てるよ。想像力と心の中の音楽を強化してね」
激辛っ!
チェロ兄貴のセル爺化、いやモンスター化が止まらなくて怖いんだ。
あ、ちなみに、アンゲリーナさんは翌年も出場し、二次予選へ進みます。
ただ、二度と「スケルツォ・タランテラ」を弾くことはなかったという…
14.ポリーナ・タイ(11歳) ロシア
休憩後、初のチェロ奏者ですね。
この子も11歳なのに大きいなぁ。
・メンデルスゾーン「無言歌」
チェロの心地良い低音がゆったりと奏でられる曲。
落ち着いた演奏でなんか癒されました。
・ダヴィドフ「泉のほとりで」
アップテンポで小気味の良い主旋律から始まる楽しい曲。
うん、これまた変に興奮することなく丁寧な演奏で素晴らしいんじゃないでしょうか。
11・11・12 34点 司会者「(12点満点を付けたチェロ奏者の)ゲリンガス先生、あなたは特に熱を込めて拍手してましたね。私はちゃんと見てましたよ」
ガス師匠「チェロの音は力強く、最も人間の声に近いという。私は今日、初めてそんなサウンドを聴かせてもらった。彼女は11歳だが、去年から目覚ましい進歩を遂げたね。今後の幸運を祈る」
チェリストの大先輩であるガス師匠が満点を付けたのに、絶対にヒマリさんと同じ12点はあげないチェロ兄貴。そこは絶対にブレません。
実は、彼はもう
12点満点が出せない体になってしまってる んです……(笑)
15.チホン・イブラノフ(11歳) ロシア
お、続けてチェロ奏者が出てきました。
今度は少年。やはり11歳にしては背が高い。
・チャイコフスキー「ノクターン」
夜想曲(ノクターン)というだけあって、ミステリアスな雰囲気のある曲。
この演奏かなり良いと思う。直前のポリーナさんより好きかも。
・ブラームス「ハンガリー舞曲5番」
お、今日二度目の登場ですね。
チェロでハンガリーとか、完全にチェロ兄貴の大好物じゃないですか。
肝心の演奏の方は、ノクターンが良かっただけに期待したんですが、
ちと粗が目立つような……お陰でのめり込めませんでした。
10・11・11 32点 司会者「(またかッ、またお前やりおったんか……ほんま御大二人の目が節穴みたいな採点やめーや…)イーシュヴァン!………このチェリストに何とコメントしますか?」
チェロ兄「彼の年ではチェロという楽器は大き過ぎるよね。まだ弾くべきじゃないよ。それに選曲も野心がちょっと大き過ぎるよね。まるで(ロウで固めた翼で太陽を目指す)
イカロスみたい だよ」
司会者「(子供相手にメチャクチャ言い過ぎやろ!ザハ爺でもそこまで言わんわ。ほんま誰がコイツを呼んできたんや。こんな劇薬を俺に丸投げしやがって。クソッ)ありがとうございました」
またも激辛ッ!!
チェロが大き過ぎるとか、チェリストを目指す子供たち全否定してて草なんだ。
それにイカロスって、要は実力を考えろ、身の程を知れってことですよね。
じゃないと、墜落して大怪我するぞって。
女性通訳が割って入ろうとしてるのを振り切ってまで言い切ってましたよ。
仕方ないから通訳もイカロスの件まで全てロシア語に翻訳してた(苦笑)
それを聞かされてるチホン君、表情が凍り付いて
涙目になってる じゃないか!
……やはり兄者はヒマリ・ショックから完全に何か狂っていますなぁ。
しかし、チェリストとして全否定されたチホン君、なんと一次予選突破!
次回の二次予選&決勝の記事でも登場するので憶えていてあげて下さい。
16.ニキータ・ベッソーノフ(12歳) ロシア
さあ、やっとこさラストバッターの登場ですよー。
「若い音楽家のための国際テレビコンクール『くるみ割り人形』の歴史は、ベッソーノフ兄弟の歴史でもある」
僕がこのテレビ制作スタッフなら、そんな煽り文句を入れるかもしれません。
というのも、このニキータ君の兄であるダニールがこの前年まで3回も出場していたのです。前回の大会でやっと予選を突破しファイナリストの3人になれたのですが、
その決勝戦には
大会史上最強のラスボス 村田夏帆がいたという……合掌。
スタイルがバグっているピアノ伴奏の長身イケメンが長男のイワンだったりします。
彼もこのコンクールのピアノ部門に出場(2015)してましたし、次男ダニールのピアノ伴奏でずっと一緒にステージに上がっていました。さらに、前年(2018)のコンクール前夜祭では招待出演でピアノを弾いてます。
もぅとにかく、このコンクールと縁がある兄弟なんですよ。
今年はついに三男坊が出てきたぞと色めき立つザハ爺とガス師匠、話にまざれないチェロ兄貴の様子がちょっとツボでした。
皆さん既にお察しの通り、彼らベッソーノフ三兄弟は大変人気があります。
高視聴率の全国放送に毎年登場するイケメンたちですから特に女性から…
満を持して初登場したこの三男ニキータ君も、昨年まで客席で兄たちの応援をしていた姿がテレビで映ってました。
なので、待ってました!と応援する女性ファンも多いのです。
その中の熱狂的な一部が、なんと
ヒマリさんを中傷するコメント までしてます。
その内容とそれに対する僕の反論はこの記事の最後らへんで。
さて、そんなドラマ的な背景&兄たちを持つニキータ君の実力はいかに?
・クライスラー「愛の悲しみ」
タイトル通り哀愁が漂うメロディ。
ミスがほとんどないように聴こえるけど、安定感や表現力がもう一声ほしいなと。
・サラサーテ「序奏とタランテラ」
これは本当に上手い!難しい曲を最後までキッチリと弾ききった。
ただ、やはり表現力があと1歩、いや3歩で、引き込まれることはなかった。
そして、ナルシストっぽい立ち振る舞いが1曲目からずっと気になった……
11・10・10 31点 あれ、思い入れがあるザハ爺たちが11点でチェロ兄貴が10点かなと予想したら、
完全にその逆でした。ちと意外。
ザハ爺「こんな複雑な感情にさせられたのは、
ワシの息子が初めてしゃべった時以来 やわ。もうな、他にどう表現したらもっと正確に伝わるか分からんわ。おーん」
いやいやいや、他にいくらでも例え方はあるでしょーよ。
3時間以上審査を続けてるんでお疲れモードですかね。
明日の二次予選の体力が残ってれば良いですが。
あ、ザハ爺に意味不明な批評をされたニキータ君ですが、残念ながらこの一次予選で敗退してしまいます。
ですが、リベンジを誓い翌年も出場し、なんと特級呪物「スケルツォ・タランテラ」に手を染めてしまうのです。その結果………は、次々回あたりで紹介しますね。
結果発表:この中の8人が脱落し8人が二次予選へ。
一斉に横並びなると、ヒマリさんがいかに幼いかが浮き彫りに。
これで無双するんだから、ギャップ燃えにも程がある。
サイーダさんと目が合って見つめるヒマリさん、すぐ知らんぷりな魔女子さん。
そんなツンツンがツボに来る人はぜひご自分の目で堪能して下さい。
まず、落選となった出場者の名前が告げられていきます。
司会者のサーシャが仕事として淡々とリストを読みあげる声が寂しく響く。
呼ばれて一歩前に出る子供たちの表情や姿を見るのツライです。
まぁでも、これはコンクールという勝負ですからね。仕方ありません。
そんな敗退宣告が終わり、生き残った猛者たちがこの8人です。
2.リュドミラ・ヴィゴブスカヤ(10歳)ロシア
6.ラウラ・コストナー(13歳)オーストリア
7.吉村妃鞠(8歳)日本
9.リチャード・コレット(11歳)チェコ共和国
10.マリー・ミリニューク(13歳)ロシア
11.ソフィア・コルタコヴァ(12歳)ロシア
14.ポリーナ・タイ(11歳)ロシア ★チェロ
15.チホン・イブラノフ(11歳)ロシア ★チェロ
翌日の二次予選は今日の前から順でこの8人が演奏することになります。
しかし、ステージ上には
7人しかいない不思議ミステリー!? 困惑して一人足りないぞと訴えるガス師匠(上の画像)。
ソフィアさんが演奏後に体調を崩して休んでると司会者が説明してました。
彼女はチェロ兄貴から「力強さだけで聴き手を感動させられたら、人生楽勝だよね。アハハハッ」と全国放送でこき下ろされた被害者の一人です。
それで気分が悪くなったのかもしれませんね。(笑)
ともかく、そんな小さな波乱もありながら、一次予選の幕は閉じました。
これにて一次予選のダイジェスト版は終了です。
ここまで付き合ってくれた読者の皆さん、本当にお疲れ様でした。
それで、どうでしょう。
きっとその全てを動画で観てみたくなりましたよね?
え、読むのに疲れてそんな体力も時間も残ってない?
え、ダイジェストだけで満足したからもういい?
ですよねー。
策士策に溺れた僕の負けです。
あぁ、ザハ爺の大人げない顔芸や生真面目なガス師匠のデレデレぶり、
そして壊れかけのチェロ兄貴を観てほしかったなぁ。
何よりも、他の出場者とヒマリさんが、レベル違いどころか、次元が違うことを体験してほしかったんですが……
とっても心残りなので、とりあえず動画は置いておきますね。
体力と時間のある時に、是非観てあげて下さい。
The Nutcracker-2019 Round 1. "Stringers"(
Link )
VIDEO それでは最後に、自制心について語ってこの記事を締めますね。
ニキータ君のところで書いた、ベッソーノフ兄弟の熱烈な女性ファンによるヒマリさん批判がちょうど良いので活用させてもらいます。
それはこんな内容でした。
「ヒマリの演奏は確かに上手いけど、無表情で弾いていて
まったく感情が込もってない 。まるで人形が演奏してるみたいだわ。そんなので(優勝して/ニキータに勝って)いいの?」
真っ当な批判というより、アンチの難癖ですかね。もはやこれは。
村田夏帆さんへの審査員の反応にクレームを入れてたのも、この手の人たちだと思います。なにせ、3回目にしてやっと決勝に進んだ次男ダニールを粉砕したのが彼女でしたから…
まぁ、それにしても、「分かってないなぁ」というのが素直な僕の反論です。
感情を込めるってことを少し勘違いしてると思うのですよ。
ちょっと想像してみて下さい。
貴方は小学生にして大人顔負けプロに近いテクニックや音楽センスを持ったヴァイオリニスト。自信を持って全国放送されるテレビ国際コンクールに出場します。
クラシック界の権威の審査員や家族・友人、一般視聴者が見つめ注目する中、
ついにステージに立ってその腕前を披露する時がやってきました!
この時の「感情」てどんなものでしょうか?
あー見て見てボクを見て!
ほら、こんなに速く弾けるんだよ、すごいでしょ!
あーここのメロディとっても美しくてわたし大好き。
自分で感動しちゃう。みんなもぜったい感動したでしょ、ねぇ?
すごい、ほんとうにカメラがボクをとってテレビに出てるんだ!
あ、あのカメラがいまわたしの顔をとってる。笑顔みせなきゃ!
あー、また速弾きがすごく上手くできた。チョー気持ちい~~~
うん、きっとこんなものですよ。子供の感情なんて。
大人だってそんな人たくさんいます。
そんな「感情」を込めて弾いてどうするって言うんですか?
まさにニキータ君なんてその良い例だったじゃないですか。
不必要なオーバーアクション、自分に酔った演奏、意図的なカメラ目線。
自制心に欠けるものがステージに立つとこうなる んです。
ライブハウスじゃなくて、クラシックのコンクールなんですよこれは。
そんな感情は聴き手にとってノイズにしかなりませんよ。
喜ぶのは演奏じゃなくて本人を好きなファンだけですって。
だから、ザハ爺も辛い点つけてあんな回りくどいコメントしたんじゃないですか。
それでは、ヒマリさんはどうだったでしょうか?
彼女は一度も意図的にカメラ目線をやりませんでした。
一度たりとも審査員や観客に目を向けたりしませんでした。
演奏する音にも姿にも前述した「感情」を一切感じさせませんでした。
だからこそ、観る者にあれほどの感動を生んだんです。そして、最初から最後の最後までヒマリ・ワールドに陶酔させることができたんです。
一度だけ、顔を向けていた場所にあったカメラに切り替わったことあったんですが、
彼女は直ぐにそれに気付いて目をそらしました。
あの時に、カメラに向かってニコリとしたら、微笑ましいなと感じたでしょうけど、
夢から覚めたようにフッと現実に引き戻されたでしょうね。
ただ、これは言っておきたいのですが、子供というのはニキータ君みたいなのが普通で当たり前なんです。
彼以外の出場者も多かれ少なかれ、演奏中の音や姿に「感情」が漏れ出ています。
だから彼らを責めるのは間違ってると思うし、コンクール側も批判するのは酷だと思ってるから(もしくは以前クレームがきたから)、審査員たちに「ディシプリン(自制心)」には触れないようにさせているのだと思います。
チェロ兄貴はポロッと言い出して通訳に止められてたけど。(笑)
では、ヒマリさんは演奏中に何も考えてないのでしょうか?
いいえ、違います。
彼女も自分の演奏に込めているものがあります。
それは自分の感情じゃなくて、「
原曲に込められた想い 」です。
ヒマリさんは自分が弾く曲の作曲者を調べてるそうですね。
チャイコフスキやサラサーテの生涯や曲に込めた心を。
それを自分なりに解釈し、音に乗せて伝えようとしてるんです。
子供の感情と作曲者の想い、どちらが心に響くかは言わずもがな。
ヒマリさんだって子供らしい感情を当然持ってる筈なんです。
だって8歳の女の子だもの。
それを強靭な自制心で押さえつけて邪念を感じさせなかったんです。
たった8歳の女の子がですよ!
強い自制心がある故に、彼女は「間(ま)」を恐れません。
人前で演奏する時、僕はどうしても間を克服できませんでした。
長音符で音をなが~く伸ばしている時、メロディの合間でそもそも音が無い時、僕は文字通り「間」が持たなくて、つい正確なタイミングよりも早く続きを弾いてしまうのがクセでした。また、いわゆる演奏ハイ、ステージハイになって走る(興奮してテンポが上がる)こともよくありました。
聴き手にはそれがモロ分かりです。弾き急いでるな、焦ってるなと。
ロックならともかく、クラシックでこれは命取り。
何故なら「品」が失われてしまうからです。
ヒマリさんの凄いところは、長音をしっかり綺麗に伸ばし切るだけでなく、無音でさえもまるでメロディの一部として感じさせ、聴く者を飽きさせないどころか
間ですら堪能させる こと(名人芸やで!)。
そんな優雅な「間」があることで、速弾きの部分がより一層、軽やかに心地良く響き、曲全体を通してメリハリを感じさせながらも上品さを醸し出すことに成功しているのです。
自分の感情を抑えて作曲者の想いを演奏に込める人生二周目の自制心。
テクニックとリズム感と音楽的センスに、これを加えることにより、
持ち前の凄い表現力が「芸術的な表現力」にまで昇華した。
それが、あのとてつもない感動の謎・秘密の正体だと僕は思ってます。
これはもう、他の子たちは全然勝負にならないですよ。
同じステージに立ってはいるけど、同じ境地には立ってないんです。
レベルが違うんじゃなくて次元が違う 、と僕が本気で言いたくなるのをこれで分かってもらえたでしょうか。
さて、今回はそろころこの辺でお別れです。
二次予選&決勝の模様とその後のヒマリさんをお伝えする次回は、
なんとか来週中にアップする予定………たぶん。
二次も決勝も色んなドラマがありますから乞うご期待。
チェロ兄貴イシュトバーンは完全に壊れてしまうしね。(笑)
早く続くを読みたいという奇特な方がいらしたら、いいねボタン、は無いので、コメントに一言「面白かった」と書き込んで下さい。
それだけで、嬉しくなってムチが入るんです。
それだけで、救われる魂があるんです!
あ、最後に、もう一つだけ。
日本人の女性ヴァイオリニストといえば、この人を忘れたらダメだと思うのです。
そう、諏訪根自子さんです。
以前、彼女のことを取り上げさせてもらってますので是非。
ナチス宣伝相ゲッベルスが諏訪根自子に贈ったストラディバリウス この女性、僕的には少し吉村妃鞠さんとかぶるのですよ。
早熟の天才、昭和のスタアのような美貌、ストイックな姿勢などなど。
ヒマリさんの「ツィゴイネルワイゼン」を観た時、
真っ先に彼女のことを思い出しました。だからって、
生まれ変わりだ!なんて運命的で短絡的なことは言いませんよ。
そういうのは、何か違うと思うので。
そもそも妃鞠さんが生まれた時(2011年6月)、
根自子さんはまだご存命(2012年3月没)でしたし。
「人生二周目の自制心」という表現は、そういう意味で使ったんじゃありません。
単に分かりやすく、その徹底された強靭さを伝えたかっただけです。いやホント。
それでは、今度こそ本当にお別れです。
また次回の記事でお逢いしまShow Must Go On!(;^ω^)シツコイ
(追記:ヒマリさんのヴァイオリンが他者に比べてあまりにも音が美しいので調べてみると、今現在は前澤友作氏所有のストラディバリウスを貸与されていますが、それ以前は、ニコロ・アマティを使用していたという情報がありました。ストラディバリウスの様な
年代物の名器が子供用サイズにもある なんて知りませんでしたよ。ただ、この8歳の時に使用していたかは分かりませんでした……誰か教えて…)
ヴァイオリン漫画 で僕の好きな作品をとりま三つ。 「青のオーケストラ」好きなだけに、怖くてアニメがまだ観れてない。
尼プラにあるからいつでも観れるんだけどレビュー読むとどうもなぁ……
でもこの機会に勇気出して青野君の演奏シーンだけでも覗いてみようか。
「四月は君の嘘」には、このコンクールで演奏されている曲が出て来るよ!
クライスラーの愛の悲しみとか、サン=サーンスの序奏とロンド・カプリチオーソ等々。
登場人物たちと同年代のロシアや欧州の音楽学校エリートがどんな演奏をするか聴いておけば、漫画をより楽しめること請け合いなのです。
「アレルヤ」の作者はなんと、あンた、背中が煤けてるぜ、の
能條純一 先生!!
あの鬼才がヴァイオリン漫画を描いてたなんて知ってましたか?
え、内容ですか? それはまぁ……何というか……いつもの能條節ですw
◆
青のオーケストラ(1) ◆
四月は君の嘘(11) ◆
アレルヤ(1)